アンテナ


諸元を決める

自作には八木アンテナがベスト、の理由

・構造がシンプルで巨大化しやすい

・加工が単純で失敗しにくい

・性能の再現性が良い

・電気的特性の調整が簡単

・耐風速性がある

・特殊な材料が不要でローコスト 

・材料を何度でも再利用できる

 

夢はあるがカネはない、という私みたいな(というか私)には最適。笑

 

材料が何度でも使い回しできるのもSo Good。ひん曲がったスイスクワッドの残骸から八木を作るのは無理でも、八木から八木なら無限リサイクルができます!

 

 

 

 

 

MMANAという神器

アンテナの設計とシミュレーションには「MANNA」というフリーソフトを使っています。具体的な使い方は、きとんとした方のホームページ等をご覧ください。笑 

 

MANNAで設計した八木アンテナ性能は送受信ともに実際の感触と同じで、使いやすく非常に優れたソフトウェアです。

 

若き日のわたしは、2週間毎日、簡易電界強度計を片手に畑の中を汗かきながら駆けずり回ってアンテナを調節しましたが、MMANAを使えばそんな野良仕事をせずとも、15分でベストな成果が得られます。

 

これはもう、石包丁からフルキャビンのコンバインになったくらいの革命です!

 

 

 

作者のJE3HHT 森さんに心から全力で感謝いたします。m(_ _)m

 

 

 

 

 

S(信号強度)よりもR(了解度)!

SSBやCWなどアナログ通信では、相手の送信内容を自分の耳で正確に聞き取る必要があるので、とにかく了解度を上げること、すなわちS/N比を上げることを目指します。

 

RS19では交信できませんが、51なら問題ありません。

 

目的信号だけ最大限に増幅しつつ、ノイズを最大限に低減する。これが理想です。

 

フロントゲインが大きいとノイズも増えると思う人がいますが、違います。飛来した信号がアンテナに入力されるときのS/Nと給電点のS/Nが異なるからです。いわゆるNFですね。

 

高性能なアンテナは、どんなに増幅しても決して歪まない最強のリニアアンプですが、同時に、実質的に最強の受信フロントエンドでもあります。

 

 

 

 

 

 

「同軸ケーブルをケチらない」 という経験則

アンテナで獲得した最高のS/Nを劣化させずに無線機に届けるためには、同軸ケーブルが果たす役割も非常に重要です。

 

実際の経験として、長さ50mの5D-2Vを12D-SFAに交換したところ、SWRが1.05から1.3に上がった一方、ノイズが減り、より弱い信号でも容易にコピーできるようになりました。

 

ケーブルの電気的長さを調整しても、以前のように1.05まで下がることはなくなりましたが、これは反射波が途中で損失することなくしっかり戻ってくるようになったためです。実際、給電点におけるSWRはおよそ1.3です。

 

 

 

 

ところで、ゲイン15dBiの14MHz5エレ八木を16dBiにしようとすると、ただでさえ長いブームをさらに5mも長くする必要があり、その労力は半端ではありません。

 

しかし、その苦労に比べると1dBを失うことはあまりに簡単です。

 

大変な思いをしてやっと獲得した貴重な1dBを安易に失うことなくしっかり生かしたいので、バンドによらず最低でも10D-FB、理想は12D-SFA、という考えを持っています。

 

 

 

 

 

 

「フロントゲイン (利得)=MAX」という経験則

  左のグラフは、今までに作った八木アンテナの利得(dBi)と倍率の関係を表しています。

 

ここで注意したいのは、利得はあくまでもブーム長に比例するのであって、エレメント数とはほぼ関係ないことです。エレメント数とブーム長の関係は下に書きます。

 

 

3eleと4ele、5eleと6eleの差は大きく、エレメント数(というかブーム長)を増やすことで体感的な改善を感じやすいです。

 

一方、4→5ele、6→7eleへのグレードアップは苦労の割に成果が小さいので、経験的にもお勧めしません。止めませんが。笑

 

 

dBは対数関数であるため 0→7dB=5倍、7→14dB=20倍のように、同じ7dB差でも値が大きくるほど倍率が急上昇し、高利得アンテナの実効放射電力(ERP/EIRP)の増大による飛びの改善が体感できるほど顕著になります。実際の使用感としては、14〜28MHzでは16dBiで体感的な改善がほぼ頭打ちになります。

 

 

話は逸れますが、14MHz〜28MHzの八木アンテナは16dBi (約40倍)が上限になので、200Wのパワーと16dBiの超高性能八木(ERP=8kW)でパイルに参戦しても、経験的に3エレ+1kW(ERP=8kW)の局と競り合うのがやっとです。200WでkW局をバンバン打ち負かすなら、沿岸部や山頂にブーム長が3〜5波長もあるような八木アンテナを建立する必要があります。理論を無視するわたしでも、理論を超えることは無理です!笑 

 

 

 

 

 

「ブーム長 = 1/4λの倍数」 という経験則

 ブーム長に対する適切なエレメント数は以下のとおりです。

フロントゲイン=最優先、帯域幅=重視、FB比=考慮で、周囲の影響を受けにくい弱疎結合(ワイドスペース)です。

 

分かりやすくするために1/4波長で区切りましたが、実際は4エレが標準スペースで、3エレはややショート、5エレ以上はややワイドになっています。

エレメント数 3エレ 4エレ 5エレ 6エレ 7エレ 8エレ
ブーム長 (λ) 1/4 2/4 3/4 4/4 5/4 6/4 
0.25 0.5 0.75 1.0 1.25 1.5 

 

 

 

 

 

「ブーム長+地上高 >35m」 という経験則

たとえば、ブーム長10mなら25m高、ブーム長20mなら15m高でだいたい同じような使用感が得られます。当地の7〜28MHzの八木で成り立つ経験則なので、他人様の環境で成り立つのかは分かりません。

 

ここでの地上高はGL(地表面)からの実際の高さではなく、住宅地などでは周囲の屋根を仮想地面とした実質的な地上高なので、「畑の20mHは(住)宅地の27mH」ということになります。

 

 

地上高と送受信能力の違い〜 送信編〜

ブームが20m近い14MHzの6エレや7エレ八木アンテナを15〜28mHで、同様にブーム長13mの28MHz 7エレ八木を15〜23mHで比べてみましたが、高さによる違いはそれほど大きくありません。

 

ただ、14MHzにおいて北米東海岸〜西インド諸島やアフリカ中部など伝播経路に陸地が含まれる地域へは高いほうが有利のような気がします。

 

これは28MHzも同じで、中央アジア〜西アジア方面へは高いほうが飛ぶようです。

 

とはいえ、たとえば現用の18mHのタワーを新たに25mHに建て替えてかえるような必要はないでしょう。アンテナに十分な性能があれば、高さが足りなくてQSOできないケースは全QSOの5%くらいしかないと思うからです。

 

 

 

 一方、4エレモノバンダーやマルチバンダー八木では、高いほうが断然飛ぶようになります。25mHまでしか経験がありませんが、この範囲内であれば高ければ高いほど良いです。

 

地上高と送受信能力の違い〜 受信編〜

受信に関しては、針が振れるほど強い信号なら地上高の違いによる差はほとんどなく、ノイズレベルの弱い信号では高さよりもアンテナの物理的サイズが支配的です。

 

単純に「大きなアンテナほどよく聞こえる」ということです。

 

 

 以上をまとめると、大きなアンテナは地上高がそれなりでも意外によく働き、小さなアンテナほど高く上げないと(高く上げても大きなアンテナほど)飛ばない、ということになります。

 

 

 

 

 

「アンテナの性能 = 縦 × 横 × 高さ」 という経験則

縦はブーム長、横はエレメント長、高さは地上高です。この容積が大きいほど送受信能力が高くなります。

 

言うまでもなく「ロングブームでフルサイズで高い」がベストです。

 

現状と改善策の組み合わせは、ショートブーム+短縮エレメント➡地上高アップ、ショートブーム+低地上高➡フルサイズ化、フルサイズ+地上高固定➡ブーム延長(≒エレメント数増)、という感じです。

 

 

 

この容積理論に当てはまらないのが、ミニマルチ製の2エレHB9CV「HB18-24」とビバレージです。ミニマルチのHB9CVは、あのサイズからは想像できないほど送受信ともに良好です。7MHzの2エレも良好で、昔作ったAFA40改(フルサイズ化)並に良い感じです。

 

ルックスに似合わないほど物凄い仕事をするのは、やはりビバレージで、これなしでは160m DXingなんてやる気すら起きません。いいですよ、ビバ。笑

 

バンド アンテナ ブーム長 エレメント長 地上高 容積 評価
 7MHz DP full-size 0(1) 19.5 20 400  △
2el l HB9CV  full-size

5

20 18 1800
3el YAGI trap (714X)

10

14.4 18 2600
4el YAGI  bent-element *1 20 20 20 5600
10MHz 3el YAGI full-size 8 15 18 2200
4el YAGI full-size 11 15 18 3000
14MHz 2el HB9CV full-size 2.5 10 28 700
3el YAGI full-size 6 10 20 1200
3el YAGI  trap (318B) 6.4  8.7  20 1100 
4el YAGI full-size (CL20) 10.5 10 18 1900
4el YAGI trap (714X) 9.3  10  20 1900 
5el YAGI full-size 14 10 22 2800
6el YAGI full-size  18 10 22 4000
7el YAGI full-size 20 10 20 4000 ★ 
18MHz 2el HB9CV trap (HB18-24) 6,6  1.7 23 260  
4el YAGI full-size 10 8.5 11 940
5el YAGI full-size 12 8.5 20 2000
21MHz 4el YAGI full-size   7.4 20 1200
5el YAGI full-size 10 7.4 20 1500
10el YAGI full-size 20 7.4 7 1000
24MHz 2el HB9CV trap 2.5 6 27 400
5el YAGI full-size 10 6 23 1400
5el YAGI full-size stack*2 10 6 23/18 1200
6el YAGI full-size 12 6 22 1600
28MHz 4el YAGI full-size 6 5 28 800
5el YAGI full-size 8 5 28 1120
6el YAGI full-size 13 5 23 1500
6el YAGI full-size stack*2 10 5 23/18 1100
7el YAGI full-size 14 5 25 1800
9el YAGI full-size 18 5 20 1800
1.9MHz Beverage full-size #1 0(1)  200   3 600  ★ 
Beverage full-size #2 0(1) 305 3 700
144MHz 15el YAGI full-size single  8 28  220  ★ 

*1  水平フルサイズに対して0.7を乗じました

*2 シングルに対して1.1を乗じました

 

 

 

 

 

「ブーム最大+エレメント最少」 という経験則

フロントゲインの上限はブーム長で決まり、水平面と垂直面の放射パターンを鋭くするためにもブームが長いほうが有利です。

 

このため、わたしのアンテナ作りで一番最初に取りかかる作業はブームパイプの現物確認で、手持ちの部材で機械的強度を保ちながらどれだけの長さを確保できるか確認します。

 

エレメント数の決め方は、上の表にまとめたとおりですが、最少が基本です。エレメントが少ないほうが、使用可能な帯域幅が広がってSWRカーブがフラットになります。また、エレメントが少ない疎結合のほうが周囲の影響を受けにくくなります。

 

これについては別に書きますが、同じブーム上に複数のバンドのエレメントを並べてマルチバンド化する場合、ワイドスペースのほうが体感できるほど飛びが良くなります。

 

それと、エレメントが少ないワイドスペースのほうがビームが鋭いせいか相対的にノイズレベルが低めです。

  

十分なブーム長に対して エレメント数が少なすぎる場合、ゲインは稼げるものの入力抵抗とFB比が上がらなくなります。んじゃ、仕方ないからエレメントを増やすか、という考えです。

 

たとえば、14MHzだとブーム長16mが5エレと6エレの切替点になり、ブームがこれよりも長くなる場合はエレメントの追加が必要になります。

 

6エレのままでブーム長18mくらいまで伸ばして性能アップできますが、逆に、18m未満でエレメントを増やして7エレや8エレに"グレードアップ"したつもりでも、実際の送受信性能は一向に改善されず、やる意味がまったくありません。これは何度も苦い経験を重ねたので、あなたがやるなら私は止めます。笑

 

 

 

 

 

 

 

「直接給電」 という経験則

わたしが作ってきた八木アンテナは9割以上が直接給電型です。

 

ラジエターエレメントの直前にある第1ディレクターをラジエターに接近させて配置することで入力抵抗を50Ωに引き上げ、マッチング回路なしで直接同軸ケーブルをつなぐことができる八木アンテナは「W1JR八木」と呼ばれています。

 

一方、わたしが作ってきたアンテナは、同じ直接給電型でも第1ディレクターとラジエターの間隔(S1)を広げたタイプになります。こうすることで、近接型のものよりも送受信性能が改善できるからです。

 

S1を広げるためには、ラジエターとリフレクターとの間隔(S0)と、先端のディレクターと先端から2番目のディレクターの間隔を広げ、なおかつ先端のディレクターの長さをやや短くする必要があります。一方、先端のディレクターを短くするとゲインが落ちるのでそれを補うために各スペースを広げ・・・ということを繰り返します。

 

その結果が上の表になります。

 

ヘアピンマッチのほうが直接給電よりもゲインが高いと思われがちですが、その差はせいぜい0.5dB以内で、インピーダンス変換ための整合損失を考えれば変わりありません。

 

また、直接給電のほうが給電部を構成するパーツが少ないので、機械的な信頼性が高く、長いヘアピンを露出してノイズを拾うこともないので、むしろ好都合です。

 

 

 

 

 

 

 

「エレメント長の反転禁止」 という経験則

たとえば、6エレ八木で第3ディレクター(先端から2番目)の長さを第2ディレクター(先端から3番目)よりも若干長くすると、ゲインとFB比と入力抵抗が見かけ上は増加します。

 

そのため某社のDXXシリーズなどにも採用されていますがが、これをやりすぎるとシミュレーション上のゲインは上がるのに実際の飛びは悪化します。

 

実際、上記のモデルのエレメントをリファインしたところ飛びが良くなったという経験があります。

 

ただ、アマチュア向けの商品としては、カタログスペックとして表記できない「飛びの良さ」などよりも、ゲインの数値や平坦なSWRカーブは視覚的に分かりやすく、商品の訴求力を高めることができるので営業的にはまったく正しい手法です。笑

 

 

 

「フローティングエレメント禁止」という経験則

アンテナは高周波素子だから部材の接続は0Ωか∞が好ましいだろうと思い、エメレントを塩ビパイプでブームから絶縁。しかし、冬、風が強い日にスタティックノイズが増加するようなので、クロスマウントに直付けするとノイズが低下しました。ちなみに、晩年(笑)はクロスマウントやマストベアリング、タワーのユニット間の接続、タワー本体のアースなど、あらゆる抵抗を下げることにチャレンジしました。それが原因なのか不明ですが、視覚上(Sメーター)も聴覚上(耳)もノイズレベルが下がりました。