今まで建てた14本のコンクリレスタワーのうち、傾いたものが2本あります。
記念すべきコンクリレス1号 KT-18Rが、傾斜初号になるというダブルタイトル獲得。笑
原因は、基礎穴を少し大きく掘りすぎたため地耐力が低下したためです。
この経験により基礎穴の精密堀りの重要性を認識したため、再び傾いたものはありませんでした。
今回までは・・・。
2015年8月6日 夕方
その日は朝から暑く、午後には積乱雲が発生。
この辺でも16時過ぎから雷鳴が鳴り響き、間もなく、大粒の冷たい雨が降ってきた。
道を走る車がハザードを出して止まってしまうほど激しい雨となり、視界は100mもなくなった。
かすんでいた我が家もすっかり見えなくなり、雷雲からのダウンバーストと思われる激しい突風が吹き荒れた。
西の空には漏斗雲らしき回転性の雲が発生し、竜巻警報も発令された。
このとき、すでに風速が30~40m/sにも達したようで、固定されずに地面に置かれていたあらゆるものが吹き飛ばされた。
我が家は滝のような降雨に遮られ、まったく見えなかった。
降り始めてから30分ほど経ち、かすんだ視界の中で傾いたタワーが見えた。
風は時々、息を吹き返すもピーク時の半分以下になり、土砂降りもそろそろ終わりにさしかかった。
さらに10分ほど経過し、雨はすっかり上がり、風も微風となった。
その時、「鉄塔が倒れている」と家にいるカミさんから電話が入る。
わたしは仕事中だったが、生徒のお迎えを待っていた。
すると、カミさんから再度電話があり、誰が呼んだのか警察官が来ていて、すぐに帰宅しろと言われているとのことだった。
生徒の退室と同時に帰宅。
25mHのKT-Nは地際のレールが折れ曲がり、ブレースも何本か曲がっていた。
レールの根本では、土地との間に10cmほどの隙間があった。
曲がったレールは1本だけだった。
どうやら強い東風に吹かれて、道路が走っている西側に5度ほど傾いたようだ。
警察官が「すぐに業者を手配して、しかるべき対処をせよ」と私に大声で命令していたが、私が自分で建てたものなので自分で対処すると返すも、道路の交通安全を確保するために、誘導員も手配せよとの追加命令。
こんな押し問答をしていてもラチが開かないので、まずはタワーにロープを掛けてこれ以上の傾斜を防ぎ、ハンドウインチで傾きを戻すと返答。
素人の作業で被害が出れば、あなた業務上過失の刑ですよと忠告する警察官と、この道30年以上の経験と同じような傾斜補正の経験もあるから黙って作業をさせて下さいと返す私。
私を追いかけながら、タワーの使用目的や被害の状況、氏名、生年月日、職業などを聴取する警察官。
無線従事者免許を提示せよというので、電波法違反の容疑ではないのだからそんな必要はないと拒みながら作業を進める私。
タワーを見上げながら「なんだか余計に傾いてきたように見える」と警察官。ハンドウインチで反対方向に引いているのだから大丈夫だと説得する私。
結局、警察官に何度も作業を止められたおかげで日没サドンデスとなり、翌日7時から作業再開。
まずは、ハンドウインチで傾斜をさらに修正。
垂直に戻ったところで登頂開始。
ここまでくれば、いつも通りの慣れた手順でアンテナを外し、マストパイプを抜き、ローテーターやケーブル類を外す。
午前10時頃、1回目のパトカー通過。
超低速で走るパトカーから見上げる警察官2名に見えるよう、頭の上で両手で丸を作り、順調に作業中のサインを送るも、応答なし。
1Tユニット、取り外し完了。
ウインチで垂直に引き戻したタワーは安定した姿勢で自立しているので、こうなれば作業はスムーズ。
念のため、昨日からトラックロープ3本を植木に掛けておいた。
半分まで撤去が済み、ロープとウインチを外した。
KT-Nの下部ストレートユニットは、KT-RやSRシリーズに比べると格段に軽いので解体作業は軽快。
今回の強風は、予想通り、雷雲からのダウンバーストと見られ、近所の家では鉄製の物置小屋が飛ばされたり、停車中の4トントラックが横転する被害が出た。
瞬間最大風速は50m/sに達するような激しさだった模様。
しかし、KT-Nのレールが曲がって傾いた直接の原因は、支線のテンションの緩みだが、それを引き起こしたのはアンカー処理の甘さだった。
これがきっかけで、以後、アンカーはすべて「チコーアンカー」にしたが、その後、アンカーの緩みは生じなくなった。
7時から始めた作業は、休憩をはさみながらも正午前に完了。
ちょうどタイミングよくパトカーがやってきたので停止させ、無事に作業が完了したことと、解体した部材は搬出して処分する予定と報告。
鳶(トビ)職ではないのかと再確認されたので、趣味だと答える。どういう趣味なのかと質問を繰り返すので、10分ほどかけて細かく説明。
理解できたのかできないのかは不明。